空き家を活用したいという相談は増えていますが、所有者・自治体・事業者の三者で利害と前提が異なり、同じ提案書では話が噛み合わないことが多くあります。本記事では、12項目を構造化した空き家活用提案書テンプレートを配布し、3場面別の使い分け・物件カルテとの連動・所有者が決断するために必要な要素を順に解説します。空き家関連で最初の1件を取りに行く方を主な対象として設計しています。
配布物について
空き家活用提案書テンプレート(PPTX)の構成
A4横・全16スライドで、12項目を1項目1〜2スライドで配置しています。複数案を比較できるよう、メイン案とサブ案を並列で並べる構成にしています。
物件カルテ・収支シミュレーションシート(PDF/Excel)
PDFとExcelの2形式で同梱しています。物件カルテは現地調査の結果を1枚にまとめるワークシートで、所在地・面積・築年数・構造・接道・周辺環境・損傷状況の7区分で記入します。収支シミュレーションシートは、初期投資と月次収支を入力すると3年・5年・10年の累積収支が出力されます。
配布物は記事末尾の「ダウンロード」セクションから入手できます。物件カルテを先に埋めてから提案書を書き始める運用を想定しています。
空き家活用提案の3つの場面
1. 所有者個人への提案
最も多い場面です。相続で取得した実家や長年使っていない店舗を、活用するか手放すか迷っている所有者が相手です。「儲かるか」より、「面倒事を引き受けてくれるか」「家族の合意を取れる説明か」「失敗した時にどこまで戻せるか」が問われます。
2. 自治体・空き家バンクへの提案
自治体が空き家バンクや活用支援事業を持っている場合、その仕組みに乗せる前提で提案します。地域全体の空き家対策との整合、移住・定住政策との接続、補助金の活用余地が問われます。国土交通省の空き家対策(出典: 国土交通省 空き家対策)の枠組みも踏まえます。
3. 事業者間(不動産・建築・運営)への提案
不動産事業者が物件を仕入れて活用する企画を、建築設計者・運営事業者・金融機関に提示する場面です。事業性・投資回収・運営オペレーションが問われ、所有者向けや自治体向けより数字の精度が要求されます。
使い方の流れ
1. 物件情報を物件カルテに整理
現地調査を行い、物件カルテを埋めます。所有者から渡された資料だけで書き始めず、必ず現地に足を運びます。
2. 活用シナリオを3案出す
メイン案とサブ案2つの計3案を出します。「住居系」「商業系」「公益系」の3軸から選ぶと視野が広がります。1案だけでは比較できず、所有者は決断できません。
3. テンプレートを案ごとに展開
12項目をメイン案で埋めた後、サブ案は変化点だけ差分で書きます。全案フル展開すると分量が膨大になり、所有者が読み切れません。
4. 収支シミュレーションを差し込む
各案の収支シミュレーションを9項目に差し込みます。「悲観・標準・楽観」の3シナリオで示すと、所有者の決断材料として機能します。
収録12項目の構成
「物件と環境(1〜2)」「活用案(3〜4)」「投資と法令(5〜6)」「収支と運営(7〜8)」「リスクとスケジュール(9〜10)」「負担分担と添付(11〜12)」の6ブロックに分かれます。
1. 物件概要(所在地・規模・状態)
物件カルテからの転記です。所在地・敷地面積・延床面積・築年数・構造・現況の6項目を1スライドに収めます。築年数が1981年以前か以後かで耐震基準が変わるため、必ず明記します。
2. 周辺環境・需要分析
最寄り駅・主要道路・周辺施設・人口動態・観光客流入を1スライドにまとめます。商業・宿泊用途を提案する場合は、半径1km・3km・5kmの人口と昼間人口を分けて示します。
3. 提案する活用案(メイン)
最も推す案を、コンセプト・想定利用者・規模・運営体制の4要素で示します。コンセプトは「誰の・どんな課題を・どう解決するか」を1文でまとめます。
4. 代替案(サブ案2つ)
メイン案がうまくいかない場合の代替を2案出します。所有者からすると「他の選択肢も検討した上での提案」と受け取れるため、決断の安心材料になります。
5. 必要な改修・投資
初期投資の内訳を費目別に示します。建築工事・設備工事・備品購入・申請手続き費用の4区分で整理し、概算の根拠(坪単価・類似事例の実績)を添えます。
6. 法令・申請事項
用途変更を伴う場合は建築基準法、宿泊用途の場合は旅館業法または住宅宿泊事業法、飲食提供の場合は食品衛生法など、関連法令を一覧で示します。「要確認」「申請必要」「該当なし」の3区分で整理します。
7. 収支計画(初期/月次)
収支シミュレーションシートの出力を1スライドにまとめます。月次の売上・運営費・粗利益と、初期投資の回収年数を「悲観・標準・楽観」の3シナリオで提示します。
8. 運営体制
運営を誰が担うかを明記します。所有者自身・事業者委託・地域団体との協働など、選択肢ごとに役割と負担を整理します。担い手不在のまま提案すると、後で頓挫します。
9. リスクと対応
事業リスク・法的リスク・近隣関係リスクの3区分で整理します。「近隣からの苦情」「想定客数を大きく下回る」「運営担い手の離脱」など、空き家活用に固有のリスクを具体に書きます。
10. スケジュール
提案承諾から開業までを月単位で示します。設計・申請・工事・開業準備・プレオープン・本オープンの6段階で整理し、各段階のマイルストーンを明記します。
11. 所有者負担と事業者負担の切り分け
最も丁寧に書くべき項目です。初期投資・運営費・固定資産税・修繕費・原状回復費を、所有者と事業者でどう分担するかを表で示します。曖昧な記述は後の紛争の種になります。
12. 添付(写真・図面)
現況写真(外観・各階・損傷部)、配置図、平面図、改修後の完成イメージを添付します。写真は撮影日を入れ、図面は方位と縮尺を入れます。
所有者が決断するために必要な要素
相続税・固定資産税との接続
空き家のままだと、特定空家等の指定を受けると固定資産税の住宅用地特例から外れる可能性があります。活用案ごとに固定資産税の試算を補足資料として添えます。税務の細部は税理士の確認が前提のため、提案書では「概算」として示し、「詳細は税理士にご相談ください」と明記します。
家族の合意形成への配慮
相続物件の場合、所有者個人だけでなく兄弟姉妹・配偶者・子の意向が絡みます。「家族会議用の説明資料」を別添する選択肢があります。専門用語を平易に書き直した1〜2枚の補足が、合意形成を進めることがあります。
「やめ時」の設計
事業がうまくいかなかった場合に、どこで撤退できるかを示します。3年目見直し・5年目契約更新の判断基準を提案書に書き込んでおくと、所有者は「失敗しても戻せる」と安心して決断できます。
よくあるつまずき
改修コストを過小に見積もる
築古物件は、解体してみないと分からない損傷が多くあります。提案書段階の見積に「予備費10〜20%」を必ず計上します。地中の埋設物、腐食、白蟻被害は調査時点では把握しきれません。
用途地域・接道条件を見落とす
宿泊・店舗用途は用途地域の規制を受けます。建築基準法の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接していること)を満たさない物件では、改修にも制限が出ます。物件カルテで必ず確認します。
運営担い手が決まっていない
「素晴らしい活用案」だけ示して運営担い手が空欄の提案は、所有者を不安にさせます。提案段階で運営者の候補を1〜2名挙げ、打診の進捗まで示します。
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参照時点: 2026年5月
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