合格通知を受け取った直後は、達成感と同時に「で、明日から何をすればいいのか」という戸惑いが来ます。資格は取った、しかし手元には案件もネットワークもない、という状態は誰もが通る入り口です。本記事では、合格後の90日間を3つのフェーズに分け、各週でやるべき具体的な行動を時系列で整理します。完璧な計画書ではなく、走りながら直していく前提で読んでください。
90日ロードマップの全体像
合格後の90日は、長期キャリアの中では短い期間です。しかし、ここでつけた最初の動きが半年後・1年後の案件機会を左右します。狙いは「資格を取った人」から「資格を使って動いている人」への転換です。
30/60/90のマイルストーン
90日を30日ずつ3つに区切り、それぞれにゴールを置きます。
| 期間 | ゴール | 状態の指標 |
|---|---|---|
| 0-30日 | 整える | 名刺・SNS・自己紹介資料が更新済み |
| 31-60日 | 動き出す | 自治体・専門家との具体的接点5以上 |
| 61-90日 | 形にする | 提案実績1件以上、次の90日計画が手元にある |
各期間で達成できないこともありますが、目安として持っておくと、毎週の判断が早くなります。
何を「やらない」かも決める
90日で全部やろうとすると消化不良になります。むしろ「この90日では手をつけない」と決めることで、限られた時間の濃度が上がります。たとえばホームページの完璧な刷新、出版企画、講演活動などは、この90日では先送りで構いません。最初の動きは「会う・聞く・出す」の3つに絞ります。
0-30日: 整える期間
最初の30日は対外的な肩書きと自己紹介の道具を整える期間です。動き出してから「名刺がない」「実績欄に何も書いていない」と気づくと、せっかくの機会を逃します。
1-7日目: 資格・名刺・SNSプロフィールの更新
合格通知が届いたその週に、外向けの肩書き表記を一斉に更新します。
- 名刺の発注:資格名と機構名を正式名称で記載。デザインに凝る前に、まず1ロット100枚を発注してしまう
- LinkedIn・Facebook・Xのプロフィールに資格名を追記
- 既存ホームページ・noteのプロフィール欄に資格を追加
- メール署名に資格名を追加
資格名は「地域文化資源マネジメント士(一般社団法人 地域文化振興機構)」のように、初見の人にも組織背景が分かる表記にします。記載例の詳細は別記事「名刺・HP・提案書への資格記載実例」を参照してください。
8-15日目: 自己紹介資料の整備
A4横・10〜15ページの自己紹介資料(PowerPoint)を作ります。商談・打合せ・挨拶訪問のいずれにも使える汎用版です。
含める項目は次の通りです。
- 表紙(氏名・資格・連絡先)
- これまでの経歴(3〜5項目)
- 取り扱える領域(資格と関連付けて)
- 過去実績(無ければ「関連経験」として周辺の仕事を記載)
- 機構と資格の説明(1ページ)
- 連絡先
実績がゼロでも資料は作れます。「これからやりたいこと」「対応可能な領域」を中心に組み立てます。
16-23日目: 既存ネットワークへの周知
名刺と自己紹介資料が揃ったら、過去に接点のあった人へ合格報告を兼ねて連絡します。
- 前職の同僚・上司・取引先で関連分野の人
- 大学・大学院時代の指導教員、研究室の先輩後輩
- 地域活動・ボランティアで知り合った人
- SNSでつながっている同分野の人
文面は短く、「合格報告+資格の概要+今後の方向性」を5〜7行にまとめます。返事を期待せず、種まきとして送ります。経験上、この段階で具体的な案件相談が来ることは稀ですが、半年後・1年後に「あの時連絡くれた人」として思い出してもらえる土台になります。
24-30日目: 興味分野3つを絞る
機構の領域は広く、すべてを追いかけると軸がぼやけます。最初の30日の終わりに、自分が90日で攻める分野を3つに絞ります。
- 例:古民家活用、祭礼の継承支援、空き家の文化拠点化
- 例:景観保全、文化財建造物の活用、観光まちづくり
- 例:博物館の活用支援、伝統工芸の販路開拓、地域学習プログラム
3つに絞った理由を1〜2行で書いておきます。後で他人に説明するときに使います。
31-60日: 動き出す期間
整え終わったら、外に出て会う期間です。30日間で「最低15人と新規に会う」を目安に動きます。
31-40日目: 自治体3カ所に挨拶訪問
絞り込んだ分野に関連する自治体3カ所を選び、担当部署に挨拶訪問します。
訪問先は、最初は土地勘のある自治体から始めます。居住地、出身地、過去に仕事で関わった地域などです。担当部署は、文化財係(教育委員会内)、文化振興課、観光課、まちづくり課などが中心です。組織図は自治体公式サイトで確認できます。
訪問の予約は、電話で「資格を取得した者として、御自治体の文化振興の取り組みについて勉強させていただきたい」と切り出します。営業色を出さず、教えてもらう姿勢で入ります。30〜40分の面談で、その自治体の現状の課題、近年の事業、今後の方向性を聞きます。詳しい接触作法は別記事「営業の5経路」の経路1を参照してください。
41-50日目: 同分野の専門家3人にコンタクト
絞り込んだ分野で先行している専門家3人にコンタクトします。
- 機構の合格者ネットワーク
- SNSや書籍で見かける同分野の実務家
- 関連学会・研究会のメンバー
- 同分野で活動するNPO・地域団体の代表
連絡手段はメール、SNSのDM、共通の知人経由など。「同分野で動き始めたばかりで、お話を伺いたい」という形で30分のオンライン面談を依頼します。3人のうち1〜2人と会えれば成功です。会えた人とは、自分が今後動く予定を伝え、適切な場面で紹介してもらえる関係を作ります。
51-60日目: 小さな案件を1件取りに行く
30日かけて整え、20日かけて種をまいたら、最後の10日で具体的な案件を1件取りに行きます。
「小さな案件」とは、報酬数万円〜数十万円規模、期間1〜3ヶ月、自分一人で完結できるものを指します。たとえば次のような形が現実的です。
- 自治体や地域団体の調査・ヒアリング業務
- ワークショップの企画・運営の一部分
- 文化資源マップ作成の現地調査
- 小規模な事業計画書の作成支援
挨拶訪問した自治体や、紹介された専門家経由で出てくる小さな話を拾います。「いきなり数百万円のプロポーザル」より、まず一緒に動いた実績を作ることが優先です。
61-90日: 形にする期間
最後の30日は、最初の実績を作り、次の90日に向けた振り返りをする期間です。
61-75日目: 最初の提案書を出す
51-60日目で見つけた話を提案書の形にして提出します。形式は案件によって変わりますが、A4縦5〜10ページの簡易企画書か、機構のプロポーザル提案書テンプレートの抜粋版を使います。
このフェーズで重要なのは「完璧を目指して出さない」ことを避けることです。70%の出来でも期限内に出します。提案書の磨き込みは、もらったフィードバックを反映する2回目以降で進める方が早く上達します。
76-85日目: 振り返り・改善
提案書を出したら(採否は出ていなくても)、ここまでの動きを振り返ります。
- 会えた人数、会えた質
- 訪問できた自治体数、得られた情報
- 提案までこぎつけた件数、率
- 自分の話し方・資料の弱点
ノートに5ページ程度書き出し、改善点を3つに絞ります。たとえば「自己紹介の冒頭が長い」「数字を出せていない」「資格の説明に時間を使いすぎる」など、自分で気づいたことを記録します。
86-90日目: 次の90日計画を立てる
最後の5日で、91日目以降の90日計画を立てます。最初の90日と同じフォーマットで、次のゴールと月別マイルストーンを書きます。
最初の90日で接点が増えた分、次の90日はより具体的な案件獲得と継続関係の構築に重心が移ります。
90日終了時点で持っていたい3つの状態
90日の終わりに、次の3つを持っていれば順調と言えます。
1. 提案実績1件以上
採否を問わず、提案書を1件以上提出している状態です。提出した経験は次の提案の質を必ず上げます。
2. 自治体・専門家との具体的接点5以上
「名刺交換した人」ではなく、「次の話ができる関係になった人」を5人以上持っている状態です。LinkedInの繋がりや形だけの名刺交換は数に入れません。
3. 自分の差別化軸の言語化
「私は◯◯の領域で、◯◯ができる人です」と15秒で説明できる状態です。最初の30日で絞った3分野を、60日間動いた経験で再編集し、自分の言葉で言える形にしておきます。
つまずきやすいポイント
90日ロードマップを走る上で、多くの人が同じ場所でつまずきます。
完璧な準備を待ってしまう
ホームページが完成してから、自己紹介資料が完璧になってから、と動き出しを遅らせる人が一定数います。しかし、外に出て初めて分かることが多く、準備だけで30日を消費すると、残り60日では成果が出にくくなります。8割の準備で動き始める判断が必要です。
営業を後回しにする
挨拶訪問や専門家コンタクトは、心理的な負荷が高く、つい後回しになります。しかし、ここを避けると90日の終わりに何も残らない構造です。週ごとに「今週は誰に会うか」をカレンダーに書き込み、強制的に動く設計が現実的です。
1人で抱え込む
「自分だけで全部やろう」とすると消耗します。機構の合格者ネットワーク、地域の同業者、過去の知人など、頼れる相手に状況を共有しながら進めます。1人で90日走り切れる人は少数派と考えた方が、計画が現実的になります。
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参照時点: 2026年5月
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一般社団法人 地域文化振興機構 編集部
地域文化資源の活用と人材育成を支援する一般社団法人。地域文化資源アドバイザー・地域文化資源マネジメント士の2階建て認定資格制度を運営し、地域で動ける専門家を育てています。
初出: 2026年4月26日 最終更新: 2026年5月3日
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