公募が出ていない段階で、自治体に直接持ち込む事業提案書を書く場面が増えてきます。プロポーザル提案書(公募回答)とは設計思想が異なり、政策方針との接続・議会説明可能な根拠・庁内稟議のしやすさが問われます。本記事では、10項目を構造化した自治体事業提案書テンプレートを配布し、各項目の書き方・自治体担当者が見ているポイントを順に解説します。資格取得後に自治体への直接提案を始める方を主な対象として設計しています。
配布物について
自治体事業提案書テンプレート(PPTX)の構成
A4横・全14スライドで、10項目を1項目1〜2スライドで配置しています。プロポーザル用テンプレート(18項目)と比べて項目数を絞り、政策接続点と財源整理の比重を高めています。
補助資料(政策接続マップ・予算試算シート)
PDFで2種類を同梱しています。政策接続マップは、自治体の総合計画・分野別計画と提案事業を線で結ぶワークシートです。予算試算シートは、初年度から3年目までの費目別概算を、人件費・委託費・物品費・需用費・旅費の5区分で集計します。
配布物は記事末尾の「ダウンロード」セクションから入手できます。
自治体事業提案とプロポーザルの違い
提案のタイミングと窓口
プロポーザルは公募要領が出てから期限内に提出します。自治体事業提案は公募が出ていない段階で事業担当課に直接持ち込み、庁内の予算要求サイクルに乗せてもらう前提です。夏から秋の概算要求期に間に合うよう逆算します。
求められる粒度の違い
プロポーザルは事業内容を具体まで詰めた提案を求められます。自治体事業提案は方向性と概算規模を示し、詳細設計は予算化後に共同で詰める前提です。最初から細かく書き込みすぎると、自治体側の裁量を奪い、かえって採用されにくくなります。
採用までのステップ
「担当課との協議」「課長級での合意」「予算要求」「議会承認」と段階を踏みます。各段階で説明可能な資料に落としていく必要があるため、テンプレートも稟議に回せる体裁を意識しています。
使い方の流れ
1. 担当部署と前さばきする
担当部署を特定し、課題感や既存の取り組みを聞き取ります。文化財関連であれば社会教育課・文化振興課、空き家関連であれば建築指導課、観光関連であれば観光課が一次窓口になることが多いです。
2. 政策方針との接続点を定義
自治体の総合計画と分野別計画、文化財関連であれば文化財保存活用地域計画(出典: 文化庁 文化財保存活用地域計画)を読み込み、提案事業がどの政策目標にひも付くかを政策接続マップに書き出します。
3. テンプレートを開いて項目を埋める
10項目を上から順に埋めます。1周目は概略でかまいません。2周目で数字と固有名詞を補強し、3周目で担当課の語彙に合わせて文言を調整します。
4. 内部稟議〜議会報告まで想定して読み返す
担当者→係長→課長→部長→議会と説明される場面を想像しながら通し読みします。「なぜこの事業者か」「他自治体での実績は」「3年後の姿は」に答えられる材料が揃っているか確認します。
収録10項目の構成
「事業の位置づけ(1〜3)」「事業設計(4〜6)」「リスクと先行事例(7〜8)」「展望と添付(9〜10)」の4ブロックに分かれます。
1. 事業名と政策的位置づけ
事業名は内容が一目で分かる平易な日本語にします。政策的位置づけとして、自治体の総合計画の章番号・分野別計画の該当箇所を明記します。これがないと担当課が稟議文に転記できません。
2. 事業の目的・対象
「何を」「誰のために」「どの範囲で」の3要素をまとめます。対象は「市民」のような広い表現を避け、「市内在住の小学生とその保護者、年間延べ500人」のように数と属性で特定します。
3. 自治体課題との関連
担当課ヒアリングで得た課題感を自分の言葉で言い換え、提案事業がどう貢献するかを示します。担当課の課題認識と提案者の課題認識がずれていると、後工程で手戻りが発生します。
4. 実施計画と体制
年度ごとの大枠と、事業者・自治体・地域団体の役割分担を表で整理します。自治体側の関与(人的支援・場所提供・広報協力)を明記すると、庁内の他部署も巻き込みやすくなります。
5. 予算・財源
初年度から3年目までの費目別概算を示します。財源は「自治体一般財源」「国・県の補助金」「自主財源」の3区分で整理し、自治体負担額が年々減少する設計にすると採用されやすくなります。
6. 期待効果(KPI設計)
KPIは3〜5件に絞ります。定量指標と定性指標を混在させ、3年目に達成する目標値とその算定根拠を必ずセットで記載します。
7. リスクと対応
事業遂行リスク・社会的批判リスク・財政リスクの3区分で整理します。対応策はリスクごとに具体の行動で書きます。
8. 他自治体の先行事例
類似事業を実施している他自治体を2〜3件挙げます。事業名・実施年度・規模・成果を1件4〜5行でまとめます。先行事例があるだけで、議会説明の難易度が下がります。
9. 中長期展望
3年事業として提案する場合でも、その後5〜10年の展望を1スライドで示します。事業終了後に何が地域に残るか、自走化の道筋を書きます。
10. 添付資料
過去実績・収支見込み・関係者からの推薦・参考文献などを添付一覧として示します。本文では概略に留め、詳細は添付に逃がす設計にすると、本体が読みやすくなります。
自治体担当者が見ているポイント
| 観点 | 見られる点 | 書き方の要点 |
|---|---|---|
| 政策方針との整合 | 総合計画・分野別計画との接続 | 章番号・該当箇所を明記する |
| 議会説明可能な根拠 | 数字・先行事例・第三者評価 | 算定根拠を遡れる形で書く |
| 補助金・交付金の活用余地 | 国・県の制度との接続 | 該当する制度名と要項を引用 |
| 持続可能性 | 自治体負担の漸減・自走化 | 3年目以降の財源構造を明示 |
政策方針との整合
総合計画の該当章節を提案書冒頭に明記します。担当課が稟議文を起こす際にそのまま転記できる形にしておくと、採用率が変わります。
議会説明可能な根拠
数字には必ず根拠資料を付けます。「来訪者◯人を見込む」と書く場合、算定根拠(類似事業の実績・人口比による推計・調査データ)を脚注または別添で示します。
補助金・交付金の活用余地
国の補助金に乗せられる事業設計にすると、自治体負担が下がり採用されやすくなります。観光関連であれば観光庁「歴史的資源を活用した観光まちづくり事業」(出典: 観光庁)、文化財関連であれば文化庁「地域文化財総合活用推進事業」が代表的です。
持続可能性
3年目以降の財源構造を明示します。補助金ありきの設計は採用されにくく、自主財源比率が年々上がる設計が好まれます。
よくあるつまずき
民間視点だけで書いてしまう
「儲かる」「市場が大きい」といった民間提案の語彙は自治体には響きにくいため、「地域課題の解決」「住民福祉の向上」「政策目標の達成」という公共の語彙に翻訳します。
政策接続点が弱い
総合計画や分野別計画への参照がない提案は、担当課が稟議文を起こせません。提案書の冒頭で必ず政策接続点を明示します。
体制・財源が曖昧
「協力体制を構築予定」「財源は今後検討」という記述では議会説明に耐えません。協議中であってもその段階を正直に書き、財源は概算でも区分ごとに数字を入れます。
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参照時点: 2026年5月
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